伝統と革新の
福山ものづくり紀行

ひたすら熱い非日常
熟年の父と息子の男二人旅。

ケン(44)は和食料理人。大工である父カズヒロ(70)と料理上手な母の背中を見て育ち、のこぎりではなく包丁の方を選んだ。ある日、母から父のことで相談を受けた。現役を退いてから張り合いがないようで、どうにも元気がないと。そんな時、お店の常連さんからいい話を聞き、広島県は福山市へと父を連れて行くことにした。

福山の、ものづくりが
「熱い」と聞いて。

「福山はアルティジャーノ(職人)の文化が根差した素晴らしい街ですよ。これ、100年以上の歴史を誇る一生物のデニムです」。常連さんである貿易商がカウンター席の椅子を引き、深い紺色のデニムを見せてくれた。
なんでも制作に5日かかり、お値段はプライスレスな体験込みで100万円だという。料理人という職業柄、体験が価値を上げることは知っているが、100万円とは!

「大工の親父さん、最近引退したんですよね。僕が体験したデニム作りもそうですが、福山はものづくりで有名な街ですよ。労いとして、男二人で行ってきたらいいんじゃないですか?熱いものづくりに触れて、瀬戸内海を眺めながら酒を酌み交わして。きっと何かに触発されて、元気を取り戻すんじゃないかな」。

なるほど。それは一理ありそうだ。調べてみると、福山にある鉄工所が、自分でフライパンを作れるプランを提供している。そうだ、久々に道具を手にものづくりをしてもらって、これを機にフライパンに持ちかえてもらうのはどうだろう?何より、キャンプが最近の趣味である自分も、この無骨なデザインに強く惹かれる。そうして私は父を誘って、福山に行くことを決めた。

「福山はアルティジャーノ(職人)の文化が根差した素晴らしい街ですよ。これ、100年以上の歴史を誇る一生物のデニムです」。常連さんである貿易商がカウンター席の椅子を引き、深い紺色のデニムを見せてくれた。
なんでも制作に5日かかり、お値段はプライスレスな体験込みで100万円だという。料理人という職業柄、体験が価値を上げることは知っているが、100万円とは!

「大工の親父さん、最近引退したんですよね。僕が体験したデニム作りもそうですが、福山はものづくりで有名な街ですよ。労いとして、男二人で行ってきたらいいんじゃないですか?熱いものづくりに触れて、瀬戸内海を眺めながら酒を酌み交わして。きっと何かに触発されて、元気を取り戻すんじゃないかな」。

なるほど。それは一理ありそうだ。調べてみると、福山にある鉄工所が、自分でフライパンを作れるプランを提供している。そうだ、久々に道具を手にものづくりをしてもらって、これを機にフライパンに持ちかえてもらうのはどうだろう?何より、キャンプが最近の趣味である自分も、この無骨なデザインに強く惹かれる。そうして私は父を誘って、福山に行くことを決めた。

カッコいい、と言い切れる
カッコよさ。

「まさかお前と二人で旅行に来るなんてなぁ」。

現地集合で福山駅に到着。薔薇の街として知られているこの土地は、ものづくりも盛んで、全国の7割の生産量を占める福山琴や、福岡の久留米絣(がすり)・愛媛の伊予絣とともに日本三大絣の一つでもある備後絣、下駄や畳表などが有名らしい。今日これから向かう鞆の浦は古くは奈良時代から刀鍛冶が盛んだったとされる場所で、江戸時代には錨(いかり)や船釘が多く生産されてきたそうだ。

「職人はとにかく道具を大切にしろ、って教わってきただろ?だから、父さんには大工の次の、”第二の道具“を手に入れてもらおうと思ってさ」。

泊まりで福山に行くということ以外、父にはプランを話していない。秘密のお楽しみも相まって、心なしか嬉しそうだ。駅前でレンタカーをピックアップして、フライパンの鍛造体験をするために鞆町の「santo(サント)」に向かう。santoは、株式会社 三暁(さんぎょう)という会社が運営している「道具を作って、使う」が体験できるオープンファクトリーだ。

三暁は、精密な切削(せっさく)加工技術を売りにクレーンや橋、エレベーターなどに使われる金属製品の製造を主業としつつ、2016年に廃業した老舗の錨(いかり)製造会社の事業を引き継いだ会社だ。そこで今回は、錨を作る技術である「鍛造」を体験できるプランに申し込んでいる。

「まずは、『鞆の浦』へ向かおう」。

福山駅から車で南下すること30分弱。「ようこそ鞆の浦」と書いてある看板を過ぎると、海産加工品と造船関係の工場が並んでいた。「鞆の浦は…確か、鉄工が盛んなんだよな」。さすが元大工だ。
スレートで覆われた工場を何軒か通り過ぎると鉄工団地の合間に、植栽に囲まれた異質な建物が現れた。入り口横には大きな錨が飾られている。到着!ここが「santo」だ。

車を止め、開いている鉄扉から中へ足を進めると、半屋外の非日常空間が現れた。「洒落た作りだな…店か?」。と感心する父に、国際建築賞なども受賞している福山市の建築家・前田圭介氏が設計を担当していることを伝える。
まずは左手にバーカウンター。そして焚き火台もあり、その横にはフライパンや鉄のチェアが並んでいる。

フライパンを手に取り見入っていると、スタイリッシュなデニムの作業着に身を包んだ代表の早間(はやま)さんが現れた。「こんにちは!」。職人さんとしての存在感はもちろん、子供の目の輝きを持ち続けているカッコいい大人の見本、という第一印象だ。「今日は、父と一緒にフライパンを作りにやってきました!どうぞよろしくお願いします」。「フ、フライパン!?」と、目を丸くする父。

小さな錨や、キーホルダーのほか、筋トレができてしまいそうなトレーなどが存在感を放つショールームで、早間さんのお話を伺う。
以前は海上交通の要として栄えたこの地で船向けに錨などを作っていたが、漁師の高齢化もあって需要が減っていること。技術を受け継ぐ鉄工所も、もう日本に数軒しかないこと。錨のカッコよさを引き継ぎたくて、職人さん含め新部門として鉄工所を引き継いだこと…。

そういった背景があるからこそ「鍛接」という伝統技術を取り入れたアウトドアツールブランド「cocinero」(コシネロ ※スペイン語で「料理人」)や自由鍛造独特の凹凸が味わい深い家具ブランド「TAonTA」(タオンタ ※フィンランド語で「鍛造」)などを展開していることも納得できる。明るく、胸を張って話す早間さんのお話を聞きながら実際に製品に触れることができるなんて、贅沢な体験だ。

ふと、窓に貼られていたお知らせに目が行った。「焚き火BAR?」。「はい。実はsantoは2022年にオープンしたんですが、まだ地元の人にも知られていなかったりするんです。若い人たちにも、もっと鉄工の魅力を知ってもらいたいな、って思って」。なるほど、それでお店のようなスペースにDJブースまであるわけだ。運営には社内のスタッフさんも積極的に携わっているという。

知ってもらって、体験してもらうことで裾野を広げたい。その想いがこの場所や、鍛造体験につながっている。その一連の取り組みは、有名なデザイン系の雑誌などにも掲載されており、遠方から足を運ぶ方も多く観光との相乗効果もあるそうだ。「錨ってね、5人がかりで作るんですよ。カッコいいんですよ!」。そう話す早間さんが、何よりもカッコよかった。

熱して、叩いて、熱されて。

鍛造体験は、様々な形の金属から好きな材料を選ぶ作業から始まる。受付を済ませたらまずは、材料を選ぶために隣の「第三工場」に移動し、フライパン、トレイ、お香立てなど色々な形状の鉄板から材料を選ぶ。
「これを、工具の次の道具にしてみなよ」。父には、文字通りまだ腕を振るって欲しいので、大きなフライパンを勧め、子供と一緒に使いたい私は、お皿としても映えそうな小さな角形のフライパンの材料を選んだ。

材料を前に、早間さんから説明を受ける。「基本的には、これを真っ赤に焼いて私が台の上に持ってきます。そうしたら、こちらのハンマーを持っていただいて叩く。叩いていたら冷めていくので、もう1回焼いて叩く。その繰り返しです。叩いていたら勝手に反ってくるので、たまに私の方でひっくり返して、まっすぐに直してまた焼く。基本的には成形はすべて、お客様のハンマー1本にかかっております!」。

テーブルにはヘルメットやゴーグル、作業用のエプロンが並んでいた。装着後、先ほどの第三工場に移動する。父の背が、少し伸びた気がした。業種は違えど、同じく現場。「聖なる場所」での正装だ。

工場に入ると歴史を感じさせる鍛造用の重機械たちが悠然と並んでおり、鉄とオイルの香りが心地良い。どれも歴史を感じるが、丁寧に愛情を持って使っている感じが伝わってくる。「ここは、近代化させない努力をしてるんです。60年から70年使ってる機械がゴロゴロありますよ。技術だけじゃなくて、この見た目のカッコよさも残したいんです。いずれは、こういう古い機械の活用方法も模索していきたいですね」。「好き」と「使命感」を内に秘めるだけでなく行動にも移す背中。若い人が惹かれて入社してきている、というのにも納得がいく。

モノトーンに近い工場内で、一箇所だけ鮮やかに熱を放つ場所が見えた。コークス炉だ。ここで、選んだ金属を1000℃以上に熱し、ハンマーで叩いていく。熟練の職人になると、色だけで±20度の温度を見極めることができるのだという。

まずはアンビル(金床)という台を叩いて練習してから、いよいよ鍛造体験の本番だ。「さあ、叩いていきましょう!キレイに、じゃなくていいですよ。『自分のフライパンを作る』という思いでやりましょう!」。こちらの気持ちにも火がついた。

私から、先に叩くことに。真っ赤に熱された鉄板を、早間さんが「ハシ」と呼ばれる道具で挟んでアンビルに乗せてくれる。「はい、叩いてください!!」。日本刀と同じように叩いて成形し、強度を上げていく。叩くたびに板の上を黒皮という被膜が舞い散る。鉄が冷めたらまた再加熱。これを繰り返すこと数回で、徐々に理想のかたちに近づけていく。

「妥協なく、でお願いします!」。「そう、上手い!」。早間さんの教え方が圧倒的に上手い。言葉一つ一つが金音と共に胸に響く。状態を見てはハシで挟んでかざし、槌目(つちめ)と曲がり具合などを確認してくれる。「次はこの辺りいきましょう!」。打つたびに色が変わる。温度が下がる前に槌目をつけないといけない。

私から、先に叩くことに。真っ赤に熱された鉄板を、早間さんが「ハシ」と呼ばれる道具で挟んでアンビルに乗せてくれる。「はい、叩いてください!!」。日本刀と同じように叩いて成形し、強度を上げていく。叩くたびに板の上を黒皮という被膜が舞い散る。鉄が冷めたらまた再加熱。これを繰り返すこと数回で、徐々に理想のかたちに近づけていく。

「妥協なく、でお願いします!」。「そう、上手い!」。早間さんの教え方が圧倒的に上手い。言葉一つ一つが金音と共に胸に響く。状態を見てはハシで挟んでかざし、槌目(つちめ)と曲がり具合などを確認してくれる。「次はこの辺りいきましょう!」。打つたびに色が変わる。温度が下がる前に槌目をつけないといけない。

今度は父の番だ。コークス炉の色を映してか、目の奥にも火が灯ったように見えた。ハンマーを手渡すと、小気味いい金属音がリズムよく聞こえてえてくる。さすがは元本職だ。頭の中にある完成形に従って、体が勝手に動いているのだろう。「この列、曲げましょう!」。「はい!完璧です!」。「いいですね!OKです!」。的確な指示で型が作られていく。接待ゴルフじゃないけれど、鍛造で接待されてるような気分になりますよ、と冗談でお伝えすると、本心で褒めてるんですけどね、と早間さんは笑った。

手だけでなく、全身に心地よい衝撃の余韻が行き渡った頃に、世界に一つだけの、愛着が湧くフライパンが完成した。すぐに使えるように、とスタッフさんが表面を研磨してくれる。その様子を見つめる父の眼差しはとても暖かく、現場の眼差しそのものだった。

今度は父の番だ。コークス炉の色を映してか、目の奥にも火が灯ったように見えた。ハンマーを手渡すと、小気味いい金属音がリズムよく聞こえてえてくる。さすがは元本職だ。頭の中にある完成形に従って、体が勝手に動いているのだろう。「この列、曲げましょう!」。「はい!完璧です!」。「いいですね!OKです!」。的確な指示で型が作られていく。接待ゴルフじゃないけれど、鍛造で接待されてるような気分になりますよ、と冗談でお伝えすると、本心で褒めてるんですけどね、と早間さんは笑った。

手だけでなく、全身に心地よい衝撃の余韻が行き渡った頃に、世界に一つだけの、愛着が湧くフライパンが完成した。すぐに使えるように、とスタッフさんが表面を研磨してくれる。その様子を見つめる父の眼差しはとても暖かく、現場の眼差しそのものだった。

アルファベットと数字を入れることができる、とのことだったので、私は子供の名前を入れた。考えあぐねたフリをする父の背を押すのも息子の役割だろう。母さんの名前にしなよ。と半ば強引にスタッフの方にアルファベットの綴りを伝えた。「一生物なんだからさ」。フライパンを手にキッチンに立つ父を想像すると、なんだか笑みが溢れてきてしまった。

「鉄のフライパンは“育つ”んです」と早間さんは言っていた。まだまだ長い人生。重く、手入れが必要な方が、体にも頭にもいい運動になるだろう。「今日は本当にありがとうございました!」。完成品を手に、早間さん、スタッフのみなさんにお礼を告げて、聖なる場所、santoを後にした。

アルファベットと数字を入れることができる、とのことだったので、私は子供の名前を入れた。考えあぐねたフリをする父の背を押すのも息子の役割だろう。母さんの名前にしなよ。と半ば強引にスタッフの方にアルファベットの綴りを伝えた。「一生物なんだからさ」。フライパンを手にキッチンに立つ父を想像すると、なんだか笑みが溢れてきてしまった。

「鉄のフライパンは“育つ”んです」と早間さんは言っていた。まだまだ長い人生。重く、手入れが必要な方が、体にも頭にもいい運動になるだろう。「今日は本当にありがとうございました!」。完成品を手に、早間さん、スタッフのみなさんにお礼を告げて、聖なる場所、santoを後にした。

熱くて厚い、お好み焼。

「鍛造体験、今度はぜひ子供を連れてきたいなあ。焚き火BARと一緒の日だったら最高だろうなあ」。子供からでもできること、夏は海水浴ができることなども聞いて、独り言のように呟きながらお昼ご飯の場所へと車を走らせた。とにかく熱い場所、熱い体験だった。先ほどフォローした鍛造体験のインスタグラムには、道具好き心をくすぐる写真が並んでいたので、早速キャンプ仲間にもシェアをした。

「お昼はお好み焼にしたよ。地元出身の人が教えてくれたお店だよ」。山々を眺めながら見晴らしのいい道を芦田川に沿って北上し、目的地である府中市に向かう。古くから地元民に愛されているお店「さち」の「備後府中焼き」が今日のお目当てだ。

広島県には、地域によって異なるさまざまなご当地お好み焼があると言われている。そのうちの一つである「備後府中焼き」の特徴は、牛ミンチ肉(ひき肉)を使っている点だ。

府中焼きのお店は市内に約40軒あるそうだ。中でも「さち」は、わざわざ遠方から訪ねてくる人も多いので予約をしておけ、と知人からは教わっていた。

昔ながらの町並みに入っていき、商店街にある駐車場にレンタカーを停め、お店に到着する。ドアを開けた途端、ソースが焦げる香りに包まれた。カウンターは常連さんと思しき方々で満席。テイクアウトの予約もひっきりなしのようで、鉄板一杯にお好み焼が焼かれていた。さっき、santoで早間さんに「鉄板は厚いほど、カリッとおいしく焼けるんです。お好み焼屋さんとか、そうでしょう」と教わったこともあり、手元に加え鉄板も眺めてしまう。

広島県には、地域によって異なるさまざまなご当地お好み焼があると言われている。そのうちの一つである「備後府中焼き」の特徴は、牛ミンチ肉(ひき肉)を使っている点だ。

府中焼きのお店は市内に約40軒あるそうだ。中でも「さち」は、わざわざ遠方から訪ねてくる人も多いので予約をしておけ、と知人からは教わっていた。

昔ながらの町並みに入っていき、商店街にある駐車場にレンタカーを停め、お店に到着する。ドアを開けた途端、ソースが焦げる香りに包まれた。カウンターは常連さんと思しき方々で満席。テイクアウトの予約もひっきりなしのようで、鉄板一杯にお好み焼が焼かれていた。さっき、santoで早間さんに「鉄板は厚いほど、カリッとおいしく焼けるんです。お好み焼屋さんとか、そうでしょう」と教わったこともあり、手元に加え鉄板も眺めてしまう。

「程なくして美味しそうな湯気を放つ「備後府中焼き」が到着した。麺は中華そばとうどんから選べるが、ここは王道のそばで。私は二玉のそば肉玉ダブル。父はそば肉玉だ。「まずヘラを真横に入れて、上下二つに分けてください。そうしたら、次は縦です。右から縦に切っていってください。」いわゆる、ピザのような切り方ではない。くれぐれも気をつけるようにと知人からはレクチャーを受けていた。郷に入れば郷に従えだ。

一口。今までも広島のお好み焼が好きでたくさん食べてきたが、それらの概念を覆す食感だった。熱せられた鉄板の上にミンチの脂がジュワっと広がり、麺が揚げ焼き状態になりパリッパリに仕上がっているからだろう。これは麺料理でも小麦粉料理でもない、備後府中焼きというオリジナル料理だ。男二人、無心・無言で向き合う。うまい。

食べ終えて、お礼を伝えお会計を済ませる。カウンターに立つご主人は二代目だそうで、来る人来る人お一人お一人に丁寧に対応する様子からも、愛され続けているお店なのだと感じた。自分も、父の背中から教わった職人としての誇りだけは大切に受け継いでいこうと思い、心から満足の「ごちそうさまでした!」をお伝えした。

お好み焼き さち
〒726-0005 府中市府中町750
TEL 0847-43-4508
営業時間 11:00~14:30 17:00~20:00 (ラストオーダー19:30)
定休日 月曜日、火曜日 (※祝日の場合は営業)

POINT!

恋しき

明治5年創業、国の登録有形文化財に指定された料亭旅館をリニューアルした観光・商業複合施設です。井伏鱒二をはじめ多くの文人墨客も訪れた歴史ある空間は、和風建築独特の潤いに満ちています。奥ゆかしい佇まいを感じながら、素敵なひとときをお過ごしください。各種お部屋については時間制で貸室にも対応しています。
〒726-0005 府中市府中町178

https://fuchu-kanko.jp/recommended/recommended-902/

POINT!

恋しき

明治5年創業、国の登録文化財に指定された料亭旅館をリニューアルした観光・商業複合施設です。井伏鱒二をはじめ多くの文人墨客も訪れた歴史ある空間は、和風建築独特の潤いに満ちています。奥ゆかしい佇まいを感じながら、ゆっくりとしたひとときをお過ごしください。ケータリングによる飲食、各種パーティーにも対応しています。
〒726-0005 府中市府中町178

https://fuchu-kanko.jp/recommended/recommended-902/

熱い想いの府中家具メーカー。

熱い想いの府中家具メーカー。

お好み焼でお腹を満たしたあとは、「ものづくりのまち府中」の代表格とも言われる府中家具メーカーの老舗、「若葉家具」へ向かう。「ここは創業75年以上の歴史を誇るんだけど、今なお新しい取り組みを続けているんだってさ」。

広い空のもと、煉瓦造りの立派な建物が見えた。ここが、「日本一」と称された府中の家具製造技術を継承しながら新たな提案を行う場、複合施設「わかばかぐ」だ。

お好み焼でお腹を満たしたあとは、「ものづくりのまち府中」の代表格とも言われる府中家具メーカーの老舗、「若葉家具」へ向かう。「ここは創業75年以上の歴史を誇るんだけど、今なお新しい取り組みを続けているんだってさ」。

広い空のもと、煉瓦造りの立派な建物が見えた。ここが、「日本一」と称された府中の家具製造技術を継承しながら新たな提案を行う場、複合施設「わかばかぐ」だ。

「こんにちは!」。事前に連絡をしていたので、代表である井上さんがお出迎えをしてくださった。入って右手に大きな椅子と、キッズスペースがあった。家族を連れてきたら子供も一緒に、理想の暮らしとじっくり向き合うことができそうだ。

こちらの若葉家具さんは1947年に創業されて井上さんは3代目。若い葉っぱのように伸びていこう、という2代目の想いから名付けられ、現在も「日本一」と言われた府中の製造技術を継承し、地域に根差した「くらしの道具」を作り続けているという。

「こんにちは!」。事前に連絡をしていたので、代表である井上さんがお出迎えをしてくださった。入って右手に大きな椅子と、キッズスペースがあった。家族を連れてきたら子供も一緒に、理想の暮らしとじっくり向き合うことができそうだ。

こちらの若葉家具さんは1947年に創業されて井上さんは3代目。若い葉っぱのように伸びていこう、という2代目の想いから名付けられ、現在も「日本一」と言われた府中の製造技術を継承し、地域に根差した「くらしの道具」を作り続けているという。

デザイナー小泉誠氏の協力のもと、ものづくり・歴史・体感スペースなどを備え、全面リニューアルオープンしたこちらの施設について、井上さんはこう話してくださった。
「メーカーとして、ショールームをショップ化したいという思いはもともとあったんですけれど、やっぱりね、地域に少しでも役に立てる場所にしたいと思ったんです」。それで1階はショップに、2階はオフィス兼ミュージアムに、3階は家具の展示場になっているのだという。
「わざわざ来ていただける場所があまりないので、うちがやることで、地域全体でやっていこうってなれば、もっと活性化していくんじゃないかなと」。

デザイナー小泉誠氏の協力のもと、ものづくり・歴史・体感スペースなどを備え、全面リニューアルオープンしたこちらの施設について、井上さんはこう話してくださった。
「メーカーとして、ショールームをショップ化したいという思いはもともとあったんですけれど、やっぱりね、地域に少しでも役に立てる場所にしたいと思ったんです」。それで1階はショップに、2階はオフィス兼ミュージアムに、3階は家具の展示場になっているのだという。
「わざわざ来ていただける場所があまりないので、うちがやることで、地域全体でやっていこうってなれば、もっと活性化していくんじゃないかなと」。

暮らしの音のとこ、と題された1階は心地よい生活スタイルの提案の場だ。
「暮らしの音、なんて意識したことなかったな」。と父。並んでいるのは食器、台所用品、時計、文具、照明などなど。確かに、暮らしは色々な音で溢れている。若葉家具では生活道具の全てを「家具」と捉えており、ここでは生活を想像しながら一つ一つを手にとって、ゆっくりと見ることができる。スタッフさんの対応も、とても気持ちが良い。父はダイニングテーブルを撫でながら、「新調してみるのもいいかもなあ」と母との暮らしに思いを馳せていた。

暮らしの音のとこ、と題された1階は心地よい生活スタイルの提案の場だ。
「暮らしの音、なんて意識したことなかったな」。と父。並んでいるのは食器、台所用品、時計、文具、照明などなど。確かに、暮らしは色々な音で溢れている。若葉家具では生活道具の全てを「家具」と捉えており、ここでは生活を想像しながら一つ一つを手にとって、ゆっくりと見ることができる。スタッフさんの対応も、とても気持ちが良い。父はダイニングテーブルを撫でながら、「新調してみるのもいいかもなあ」と母との暮らしに思いを馳せていた。

2階はオフィス+歴史を知るミュージアムスペースだ。「ここがオフィスへと続いているんですか?」。四角いトンネルのような場所に、江戸時代、元禄末期から始まった府中家具の歴史が記されていた。「始まりは婚礼の箪笥だったんですね」。トンネルを抜けるとそこには、歴史を作ってきた道具たちが丁寧に展示されていた。「あえて『ふりがな』を振らないことで、コミュニケーションが生まれるんです」と井上さん。「『鑿』って読めるか?」父は、一つ一つを讃えるように眺めては、私に用途を説明してくれた。

「家具に、歴史に、道具の展示に。まるで美術館のようですね」。「デザイナーの小泉さんは『美術館つきオフィスだ』、と言って下さっています。建築・デザイン関係の方にもぜひ来てほしいですね」。そう微笑む井上さんの眼差しは、窓からの日差しのように暖かかった。

3階はダンボールがパーテションになっている家具の展示空間だった。「社員みんなで組み立てたんです」。きっと几帳面な社員の方が多いのだろう。その間に並ぶ家具の前で足を止め、若葉家具の放つ優しい雰囲気の理由が分かった気がした。

2階はオフィス+歴史を知るミュージアムスペースだ。「ここがオフィスへと続いているんですか?」。四角いトンネルのような場所に、江戸時代、元禄末期から始まった府中家具の歴史が記されていた。「始まりは婚礼の箪笥だったんですね」。トンネルを抜けるとそこには、歴史を作ってきた道具たちが丁寧に展示されていた。「あえて『ふりがな』を振らないことで、コミュニケーションが生まれるんです」と井上さん。「『鑿』って読めるか?」父は、一つ一つを讃えるように眺めては、私に用途を説明してくれた。

「家具に、歴史に、道具の展示に。まるで美術館のようですね」。「デザイナーの小泉さんは『美術館つきオフィスだ』、と言って下さっています。建築・デザイン関係の方にもぜひ来てほしいですね」。そう微笑む井上さんの眼差しは、窓からの日差しのように暖かかった。

3階はダンボールがパーテションになっている家具の展示空間だった。「社員みんなで組み立てたんです」。きっと几帳面な社員の方が多いのだろう。その間に並ぶ家具の前で足を止め、若葉家具の放つ優しい雰囲気の理由が分かった気がした。

最後に、外と中、暮らしと庭の融合を考えた中で、新しい暮らしの提案として庭の中に建てられた「わかばこ」を見学させていただいた。「わかばこは、小さな箱ではなくて大きな家具なんです」。このデザインも小泉誠氏で、本来なら工務店が提案するこの小屋を是非、家具屋としても提案していきたいとの想いから、リノベーションを機に「わかばかぐ」の庭に誕生することになったそうだ。

「家具から空間を作ってほしい。そう考えての取り組みです。府中市役所にも採用されていて、住まい方や使い方は自在に対応できます」。家の離れや趣味の部屋、カフェを併設したいなど、様々な要望に合わせた提案が出来るとのことだ。

「空き地などを活用することができれば、街が変わるかもしれない。小商いができるかもしれないし、宿泊場所がないことの解決につながるかもしれない。そういった可能性が、府中と、『わかばこ』にはあると思うんです」。

井上さんは自社にとどまることなく、府中家具、もっといえば府中のことを良くしたいと、誰よりも考えていらっしゃるようだった。創業から3代に渡って引き継がれてきた老舗。だけど、いまなお若葉の会社。父の心にもきっと、何かが芽吹いたに違いない。

わかばかぐ|若葉家具株式会社
〒726-0013 府中市高木町1201-1
TEL 0847-45-5816
URL
https://wakabakagu.com/
営業時間 10:00〜18:00
定休日 木曜日

潮待ちの港から、新たな船出を。

井上さんと「わかばかぐ」にお別れを告げ、先ほど鍛造体験をした鞆の浦に戻ってきた。今日の宿は「潮待ちホテル櫓屋- ROYA - 」だ。

まずはチェックインをするために、姉妹ホテルである「ホテル鷗風亭」へ向かう。入るとスタッフの方が笑顔で出迎えてくださり、海が目線に広がるロビーに案内をしてくれた。
宿泊客で賑わうロビーからは、明日行く予定の仙酔島が見える。この島は、鞆の浦から船で5分。仙人が住んでいたという伝説があり、「仙人が酔う程に美しい島」というのが島の名前の由来と言われている。

ホテル鷗風亭
〒720-0201 福山市鞆町鞆136
TEL 084-982-1123
URL
https://www.ofutei.com/

潮待ちの港から、新たな船出を。

井上さんと「わかばかぐ」にお別れを告げ、先ほど鍛造体験をした鞆の浦に戻ってきた。今日の宿は「潮待ちホテル櫓屋- ROYA - 」だ。

まずはチェックインをするために、姉妹ホテルである「ホテル鷗風亭」へ向かう。入るとスタッフの方が笑顔で出迎えてくださり、海が目線に広がるロビーに案内をしてくれた。
宿泊客で賑わうロビーからは、明日行く予定の仙酔島が見える。この島は、鞆の浦から船で5分。仙人が住んでいたという伝説があり、「仙人が酔う程に美しい島」というのが島の名前の由来と言われている。

ホテル鷗風亭
〒720-0201 福山市鞆町鞆136
TEL 084-982-1123
URL
https://www.ofutei.com/

チェックイン後は車を置いて散策へと出かけた。風情ある静かな港町は、どの時間もきっと素晴らしいだろうけれど、この黄昏時は特にいい。眠らない都会と違って、街全体がゆっくりと一日の終わりを迎えようとしている感じが。

古い蔵を改装したと思しきお店から、コーヒーを焙煎する香りが漂ってくる。温故知新。景観を生かすようにデザインされた店先を見て、そんな言葉がよく似合う町だと思った。全国でも、ここ鞆の浦の4店舗だけで作られる「瀬戸内の養命酒」とも呼ばれるリキュール、保命酒のお店と新しいホテルが混在している。新しいものと古いものが交わりあって、歴史は続いてきたのだろう。

石畳の路地裏を歩く。鳥の声が響く空は高く、風が優しい。立ち並ぶ木造の町家たちは、ものづくりに携わってきた父を労っているようにみえた。

今、撮っておかないと後悔しそうな気がして父と一緒に写真を撮った。「いつかは父と」と思っていたが、こういう機会でもなかったらきっと一生来なかっただろうから。

常夜燈の側で海を眺めながら、仕事の話もたくさん聞いた。「何か、新しいこと始めてみるかな」。満ち潮と引き潮がぶつかる場所だったため、瀬戸内海を横断する船は一度ここで立ち止まり潮の流れが変わるのを待っていたことから「潮待ちの港」と呼ばれた鞆の浦。父にとっても、新たな船出の地になりそうだ。

POINT!

福禅寺対潮楼(ふくぜんじたいちょうろう)

海岸山千手院福禅寺の本堂に隣接する対潮楼は、江戸時代の元禄年間(1690年頃)に創建された客殿で国の史跡に指定されています。座敷からの海の眺めは素晴らしく、1711年、朝鮮通信使の李邦彦(イパンオン)は「日東第一形勝(日本で一番美しい景勝地という意味)」と賞賛。1748年、洪景海(ホンケヒ)は「対潮楼」の書を残しています。
〒720-0201 福山市鞆町鞆2

https://dive-hiroshima.com/explore/2233/

POINT!

福禅寺対潮楼(ふくぜんじたいちょうろう)

海岸山千手院福禅寺の本堂に隣接する対潮楼は、江戸時代の元禄年間(1690年頃)に創建された客殿で国の史跡に指定されています。座敷からの海の眺めは素晴らしく、1711年、朝鮮通信使の李邦彦(イパンオン)は「日東第一形勝(日本で一番美しい景勝地という意味)」と賞賛。1748年、洪景海(ホンケヒ)は「対潮楼」の書を残しています。
〒720-0201 福山市鞆町鞆2

https://dive-hiroshima.com/explore/2233/

散策を終え、櫓屋に到着する。ここは分散型古民家ホテルとして、福山市の伝統建造物に指定されている。暖簾をくぐり中に入ると、名前の通り「櫓」があり船の街であったことを思わせる。古き良き歴史は、そのまま立派な展示物となるのだ。

一息入れてから、「和会席」でもなく「フレンチコース」でもない和と洋の良さを凝縮した和洋折衷の「創作ディナーコース」をいただいた。
職業柄、料理は仕事の延長として研究しながら味わってしまうが、ここではリラックスして地元瀬戸内の旬を味わうことができた。

食事を堪能した後は部屋へ。現代の設備が古民家と調和し、快適さを生み出している。檜の風呂にお湯を張り、父に勧める。「母さんも連れてこないとな」と父。順番で風呂に入った後は、縁側に座ってくつろいだ。浴衣を着て、ライトアップした中庭を眺め、今日と今日までを振り返りながら、この街にあったリズムで会話を交わした。

一息入れてから、「和会席」でもなく「フレンチコース」でもない和と洋の良さを凝縮した和洋折衷の「創作ディナーコース」をいただいた。
職業柄、料理は仕事の延長として研究しながら味わってしまうが、ここではリラックスして地元瀬戸内の旬を味わうことができた。

食事を堪能した後は部屋へ。現代の設備が古民家と調和し、快適さを生み出している。檜の風呂にお湯を張り、父に勧める。「母さんも連れてこないとな」と父。順番で風呂に入った後は、縁側に座ってくつろいだ。浴衣を着て、ライトアップした中庭を眺め、今日と今日までを振り返りながら、この街にあったリズムで会話を交わした。

料理の道を志した時、「道具は大切だ。腕が、道具に見合うようになっていく」って、初めての包丁を買ってくれたのは父だった。直接、技を受け継ぐことはなかったけれど、人の毎日を豊かにしたいという思いは受け継いだと思っていることを伝えた。ものづくりを楽しく思う気持ちや、道具を大切にする心を持って、「伝統」と呼ばれるものにチャレンジしていきたい、ということも。

「ところで、料理はお前が教えてくれるのか?」。
「違うよ。一番の先生がすぐ横にいるだろう」。

人の家ばかり作ってきたのだから、今度は自分の家の中、「暮らし」を充実させたらいい。赤くなった父の顔を見て、1000度のコークス炉を思い出した。二人の古希のお祝いには、ダイニングテーブルをプレゼントしてみようかな。

潮待ちホテル櫓屋-ROYA-
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お好み焼・鉄板焼 かたおか

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「これぞ府中焼き」と言える逸品が味わえる、「備後府中焼きを広める会」会長が店長を務めるお店。ミンチ肉が入った中はふんわり、外側の麺がパリッパリの、昔ながらの府中焼きをアットホームな店内でぜひ。
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