奥湯来
シャワークライミング
「非日常アドベンチャー」
絆が深まる家族旅。
[実施時期:5 月~10 月]
「非日常アドベンチャー」
絆が深まる家族旅。
[実施時期:5 月~10 月]
「♪いまこそ〜アドベンチャ〜」
自分が小学生だった頃のアニメの主題歌を、レンタカーの後部座席で小学3年の息子が歌っている。市内を抜け、のんびりとした街並みを1時間も運転すると、目的地である湯来温泉に到着した。「大学時代を過ごした広島に」と決めてからは、体を動かすことが好きな妻が、息子と一緒に行程を決めた。豊かな自然はそれだけで、気分を晴々とさせてくれるだろう。その上「アドベンチャーツーリズム」だなんて、今の自分に一番必要な気がして妻と息子に感謝をした。
広島市街から車で約1時間。湯来は瀬戸内海と西中国山地など豊かな自然に囲まれた温泉地。手付かずの自然の中を流れる水内川(みのちがわ)は、非常に高い透明度を誇り「清流めぐり利き鮎会」で準グランプリを過去4回も受賞するほど。秋冬はトレッキングやサイクリング、一年を通じてBBQ、キャンプ、温泉などを堪能できる、密を避けた空間でのびのびと満喫できるアクティビティの宝庫です。
せっかくだから地元のものを、と入った湯来ロッジのレストランでは「イノシシ肉のハンバーグ」がおすすめらしい。臭みは一切なく弾力に富み、りんごベースのソースが旨味だけを引き立たせる。よほど気に入ったのか、子供は妻の分までもらっていた。こんにゃくをはじめとした地のものが充実した小鉢もうれしい。ハンバーグをペロリと平らげ窓から森を眺め、奥にいるであろうイノシシに自分を重ねてしまう。大学を出てから、ずっと脇目も振らず猛烈に働いてきたことを。
シャワークライミングの初級コースは約3 時間。午前、午後の部ともに楽しめますが、お昼は是非とも現地で堪能したいところ。湯来ロッジのレストランでは旬の土地のものを生かした県北の味を楽しめます。
お腹も満足したところで、湯来ロッジの隣にある湯来交流センターでシャワークライミングの受付を。「BE A PLANET」を掲げる、NPO法人湯来観光地域づくり公社の佐藤さんが本日のガイドだ。どうやらIターンでこちらに来られた方のようだ。これからの働き方や生き方についての考えがまた巡る。大人の旅は「楽しい」以上の感情をもたらしてくれる。そんなことを思っているうちに、妻が受付を済ませてくれていた。
説明を受け、手続きを済ませたら、ヘルメット、ウエットスーツにラッシュガードと言った道具一式を積んだトラックと一緒にさらに山奥へ。15分ほど車で登っていくとこれぞ隠れ家といった山小屋が現れた。木漏れ日を浴び、澄んだ空気を鼻から胸いっぱいに吸い込む。当たり前のことが、とてもありがたく感じられる。
着替えを終えレクチャーを受け、準備運動を入念に行う。妻と子供は楽しそうだ。
大学時代より、ややふっくらしたお腹周りを気にしながら、勇気を出して川へ向かう。父として、格好いい背中を見せられるだろうか……。
万全の装備に身を包み、最初は水に慣れるところから。ゴツゴツした岩を踏みしめながら、くるぶし、膝、腰、肩と順々に、そろりそろりと川へ降りる。「冷たい!」最初はそう感じたが、水を含ませることで、ウェットスーツが体にフィットし徐々に温まってきた。「この川は太田川の源流なので、流されても瀬戸内海を経て、お住まいの福岡に帰れますよ!」ガイドの佐藤さんのユーモアが緊張をほぐしてくれる。全身を水につけ、軽く浮かんだり泳いだりしながら、あたりを覆う緑を眺められるくらいに余裕ができたら、いよいよ初級コースへのチャレンジだ。一番余裕ないのが私だ。
瞬間瞬間、表情を変えてゆく、岩と水が作り上げた天然のウォータースライダー。妻はすっかり子供の表情になっている。最初不安そうだった息子もガイドさんのサポートを受けながら、普段ゲームで遊んでいる時に見せる以上に楽しそうな表情で楽しんでいる。私も、何かに抗うかのように川を登ろうとしたけれど、途中からは流れに身を任せてみることにした。自然が自分の中に入ってくるようだった。
ひとしきり遊んだら、いよいよ本日のメインイベント、滝壺ダイブだ。7mと気軽に言うけれど、身長も入れたら9m弱。住んでいる3階に相当する。ガイドさんが率先し、妻と息子が一緒にかけ声を発する。「3,2,1!」ダイブ!と思いきや、何度かやり直しを懇願してしまう。ウォータースライダーで弱気をすっかり川に流した誇らしげな息子が背中を押す。
「お父さん!大きい山を乗り越えたら、格好いいって言われるよ!」
(「息子よ…これは川だ!!」)
息子が行きの車で歌っていた歌が、瞬間思い出された。
「いまこそアドベンチャー」
そうだ、お前の言う通りだ。人生の山を越えろ、いまこそアドベンチャーだ…!と、地面を蹴った。
来る前に抱えていた悩みも、水しぶきと共に弾け飛んだ気がした。妻と子が駆け寄って、いや泳ぎ寄って?来てくれた。冷たさではなく、体の芯が熱いのを感じた。もう、迷うことはない。
スマートフォンもいいですが、川から見る山の景色やみんなの笑顔など映える瞬間は満載なので、防水のカメラなどお持ちいただくと、より多く記念に残る写真が撮れること間違いなしです。
新しい体験を経て、久々3人で写真を撮った。「BE A PLANET」奥湯来アドベンチャーのパンフレットにあったコンセプトを、まさに体感する。地球と一つになった特別な体験。大自然の中、家族も一つになれた気がした。湯来温泉に戻り、貸切露天風呂「誠の桧湯」に入る。日常に戻ったら、また迷ったり戸惑ったりすることもあるだろう。そんな時は、背中を押してくれた息子の言葉と、シャワークライミングの滝壺ダイブを思い出そう。自然の一部となった瞬間を忘れないようにしよう。
「ありがとな」
少し成長した顔の息子にそう声をかけながら、湯気の中で色々なものがほぐれていくのを感じた。